AI税
仕事で作る資料は大半が英語なのだが、英語力に自信がないので、このところずっとAIに校正をお願いしている。最初は自分で書いた英文を直してもらっていたが、日本語をはじめから翻訳してもらうほうが早いと途中で気付いた。
でも私だってそれなりに英文を書いてきたわけで、文章によっては英語で書いたほうが楽なこともある。だから最近は、ルー大柴みたいなラフな日本語と英語のちゃんぽんを書いて、端正な英語に書き換えてもらうことが多い。”While the campaign is still ongoing, the result is いまのところいい感じ” みたいな。
しかしこうなってくると、そもそもなぜ私が校正というステップをする必要があるのか? とは思う。私がラフな文章を書いて、読む方はAIが自動的に校正したプロフェッショナルな文章を読めばいいわけじゃん。
というネタは前に「チャット・ジェントリフィケーション」というショートショートに書いた。
聞くところによれば、プログラミングの世界ではそういう方向に既に進んでおり、プログラマがプログラムを書く時代は終わりで、主な仕事は設計とレビューになるなどと言われている。
それに比較すると、私のようなアナリスト、ストラテジストはスライドやら図表やらを未だにチクチク作っており、ずいぶん前時代的である。Geminiはスライドを作れるようになって、試してもみたが、まだ仕事に投入できる感じはしない。AI大好きな人達が誰も見る気がしないようなAI製まとめスライドをFacebookとかにアップロードしているが、あれくらいの用途にちょうど良い塩梅である。
でもAIがプログラミングに与えた影響を思えば、スライドやら図表だって間も無く高精度に作れるようになるんじゃないかとは思う。はっきり言って、プログラミングよりスライド作成のほうが何倍も簡単でしょう。プログラミングのほうが需要があったから、というかプログラマーが高給だから、そのぶん進歩が早かっただけで。
そうすると、アナリストの仕事も分析そのものより、設計とレビューになるわけで、特に暗い予想を立てて警告を鳴らすのが仕事になる……ということは「カサンドラ合同会社」で書いた。我ながら自分の書いたものをよく覚えてるな。
そんな未来が来た時、それが社内の話だと、ちゃんと品質の良いAIを導入しないと仕事のパフォーマンスに影響が出るよねとか、就職先・転職先は導入してるAIを見て選びましょうとか(まだOutlook使ってる会社は勘弁みたいな)、会社が契約している優秀なAIを活用して副業するやつが出てきそうとか、逆に優秀なAIが社内にないと野良AIと契約して社外秘データを外部に送るやつが出てきそうとか、そういうネタに繋がっていく。
でもこれがフリーランスとかも含めた社外の話になると、さらに面白くなるのではないか。たとえば、二つの会社がやりとりするとき、先に書いたように、互いにラフなメッセージをAIが校正してコミュニケーションするようになったとして、それはどっちの会社のAIを使うのか。AI同士で擦り合わせするのかもしれない。すみませんがこちらは私チャッピーの流儀で進めさせていただきますので、などなど。
他にも例えば、フリーランスのデザイナーはAdobeのサブスクリプションが必須であり、それがAdobe税とか言われて、どんどん高くなっているが、仕事に必要なのでやめられない、みたいな話がある。Adobeのツールが必要であるのと同じかそれ以上に、Adobeのファイル形式でやりとりすることが必要だと。
同じことがAIに起きたら、下請けをする側ほど優秀で高価なAIを契約して、いい企画書とか報告書とかを作らなきゃいけなくなる。だって、うかうかしてると、他の下請けがもっと優秀なAIを使うかもしれないから。だから究極的には、権力のある人ほどAIを使う必要がない。手元に上がってくるのは、もうぜんぶ優秀なAIの手を借りたものなのだから。
そもそもAIというのが月額制で、みんな必要不可欠なものになったら、ある意味でユニバーサルインカムの反対になるわけ。AI税だ。そして、それはどんどん高くなっていくのだろう。なんだか昔盛り上がった、携帯電話の料金問題みたいである。そのうち、日本のAIは高すぎる! みたいなCMが流れるのか。AGIが実現したら、多分それは優秀な社員を雇うのと同じくらい高価で、そのかわりちょっと間が抜けてる格安AIが出てくるのかもなと、菅元総理が引退というニュースを見ながら思いました。

