オフィスソフトはこの先生きのこるの?
AI企業Anthropicが新しい機能を発表すると、それによって代替されそうな会社の株価が暴落するという出来事が続いている。年明け、AnthropicがClaude Coworkの機能強化を発表すると、呼応するようにSaaS関連の株価が暴落して「SaaSの死」なんてことが言われるようになった。
そのあとAnthropicがCOBOL(古いプログラミング言語)をAIによって刷新できるという記事を書いたら、COBOL事業をやっているIBMの株価が暴落して、申し訳ないけど笑ってしまった。Anthropicもこんな狙いうちみたいなブログ書くなよ。
SaaSの話に戻ると、私は詳しくない分野だから、死ぬかどうかは分からない。まあ、これくらいAIが優秀になってしまったら、SaaSが担っていた機能を自分で色々作ったりもできるだろうとは思う。問題は、ふつうの社員がそんなことをしたいかという話で、少なくとも私はSaaSの代替をAIで作るなんてやりたくない。
だから、やりたくないことをやってくれる会社としてSaaSは残るのではないか、と素人の私は思う。一方でAIを駆使して安価にSaaSを提供する競合とかは出てくるだろうし、既存のSaaSは収益性を維持するのが難しくなっていくのだろうが、それは「死」からは程遠いし、SaaS業界に限った話でもない。だいたい「~の死」とか騒がれて、本当に死ぬことはほとんどない。死はもっと誰にも騒がれず、ひっそりと起こるのである。
それよりも、私はAIによってオフィスソフトがなくなっていくんじゃないか、いや、むしろなくなってくれ、と思う。具体的にはMicrosoftのワード、エクセル、パワーポイント、あるいはGoogleのドキュメント、スプレッドシート、スライドのことだ。私はこの二十年くらい、こうしたソフトをずっと使ってきて、ふつうの人よりだいぶ詳しいと思うが、なくなって欲しい。
たとえば、仕事で事業報告書を作るとする。一般的な流れはこんな感じだったのではないか。
資料に必要なデータを社内のダッシュボードや、別のスプレッドシートなどから見つける
データをまとめて、エクセルに取り込んでグラフを作る
グラフをパワーポイントに貼り付け、スライド上でストーリーを肉付けしていく
こういうことを私はずっとやってきたし、大勢の人もやっていると思う。しかし、なんで全部デジタルにあるものを、人間が揃えてまとめなきゃいけないのか。全然楽しくない。
同じことをAIにやってもらうとする。一番簡単なのは、人間がテキストファイル(markdown)で中身を書き、それをAIが直接スライドにしてしまうことである(MarpとかSlidevといったツールがある)。データを参照したり、グラフを載せたりしたかったらAIがやってくれればいい。オフィスソフトは必要ない。
AIがプログラミングに与えた影響を思えば、スライドやら図表だって間も無く高精度に作れるようになるんじゃないかとは思う。はっきり言って、プログラミングよりスライド作成のほうが何倍も簡単でしょう
と書いたのだけど、この時は私がただAIの知見が不足してただけで、暇になって色々試してみたら、すぐにできた。そりゃあそうだ。プログラムを書くよりスライドを作るほうが簡単だよ。
スライドやグラフをツールでプログラミン的に作るというやり方自体は新しいものではない。エンジニア系の人達は以前からよくそうやってプレゼンテーションを作ってきた。でも、そのためにはPythonやらNode.jsやらをインストールしたり、CSSみたいな言語を理解する必要があった。
いまはClaude Codeなんかに頼めば、準備の部分から全部やってくれる。「文字はもうちょっと大きく、背景は明るめに」「データベースから四半期売上を引っぱって棒グラフにして」「ここに載せる競合の事例ってなにがある?」なんて言うと、それで資料も書き換えてくれる。ぶっちゃけAIに頼む仕事としては、動くか動かないか分からないプログラミングの生成よりも、こうしたスライド作りとかのほうが即効性があるくらいだ。
MicrosoftはCopilotを、GoogleはGeminiをオフィスツールに組み込もうとしているけど、それは私に言わせれば解決になってない。AIに「資料作りを手伝って欲しい」のではない。AIに「資料を作るフローを全部やって欲しい」のである。
SaaSが多分すぐには死なないように、AIがどれだけ進化しても、オフィスツールだってすぐなくなることはないだろう。でも、ここまでAIが色々できるなら、オフィスツールというのは早晩、邪魔で面倒な存在になっていくかもしれない。ぜんぶAIがやってくれるのに、なんでわざわざエクセルとかパワーポイントとかを介さなきゃいけないわけ? という。
MicrosoftやGoogleにとっても、AIを推進して儲かるなら、無理にオフィスツールを長らえさせる必要はない。だから、案外オフィスツールの寿命はそんなに長くないのかもしれない。
と、ここまで先週のうちに書いていたら、Google WorkplaceのCLIとか、エクセルやパワーポイント操作に長けたChat GPT 5.4とかが出てきた。さすがにめまぐるしい。いずれにせよ、オフィスツールの操作方法というのはAIによって急激に変化していくのだろう。それならいっそ、オフィスツールごとなくなって欲しいなという期待を込めた、たよりない予測でした。
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