もうちょっとだけThreadsについて書きます。次はもっとどうでもいい話をする。
Twitterではない
しばらく使って思ったけど、これはTwitterというよりInstagramだな。テキストも投稿できるようになったInstagram。
よくよく考えてみればTwitterよりInstagramのほうがずっと成功してるわけで、Twitterの経営がアレだからと、サービスをパクって会員を奪う必要はそんなにない。どちらもしばらくMAUを公開していないが、Twitterの会員を半分奪うより、Instagramの会員を20%増やすほうがたぶん効果的なわけである。
ザッカーバーグはThreadsの会員が10億人になる道筋が見えたら収益性を考えると言っている。Twitterには背伸びしても言えない発言で、煽ってるとしか思えない。しばらく我慢の時間だったせいか、Threadsでやけに元気なザッカーバーグを見るのは面白い。
ThreadsはTwitterのコピーではなく、Instagramのリニューアルなのだと考えると納得がいくこともある。
Instagramはストーリーズやらリールやらでテコ入れをしているけれど、本体のフィードは投稿のハードルが上がりすぎて、素人には手を出しづらい状態である。本当はストーリーズやリールを主体にしたり、フィードにテキストなど手軽なコンテンツを投稿できるようにしたいのだろうが、そうするとコア層の反発は避けられない。テキスト投稿機能はストーリーズに組み込まれたり、ノートとかいう誰が見ているのか分からない場所に押し込まれたりしている。
だからテキストも流せる、よりカジュアルな、新しいフィードとして新しいアプリを作るのは筋が通る。ThreadsにはそのうちDM機能が付くだろう。もちろんInstagramのDMと相互に送信できる。ストーリーズやリールも来るかもしれない。残されたInstagramはコア層のための古いフィードになる。Instagramを置き換えるとまで言うつもりはないが「補完する」くらいのことは十分に言える。
フィードと言えば前回、フォロワーのみに絞ることも時系列になることもないと書いたら、どちらの機能も開発中だという発言があった。問題は、FacebookやInstagramも同等の機能があるのだから、という説明である。FacebookやInstagramをフォロワーのみ、時系列で見ている人がどれだけいるだろうか。Threadsに同等の機能が来ても、使いやすい場所には置かれないのだろう。
それにしても、しれっとイーロン・マスクがThreadsの「アルゴリズムに操作されたシステム」を批判しているのは笑える。Twitterを無茶苦茶にするには、これくらいの面の皮の厚さが必要なのだろう。
ソーシャルメディアなのか
Instagram 2.0としてThreadsをあらためて見てはいるが、正直あんまり書き込むことがない。フォローしている人もあんまり書きこんでいない。フォローしてないインフルエンサーの投稿ばかりでつまらないという意見もあるけれど、そもそもフォローしている人の投稿が少ないのだろう。
仮に、1日に16時間スマホに触る機会があって、2時間に1回はThreadsを立ち上げるとする。1日8回である(どうでもいいけど、植木算を習った小学生なら9回と言うかも)。チェックするたび、10件くらいは新しい投稿が欲しい。ちゃんとフォローしている人の投稿である。そうすると1日に80件。80人フォローしていて、1日に1回投稿してくれればいい。2日に1回だと160人フォローする必要がある。
Twitterでは気付けば何百人とフォローするのが自然になって、その中には1日に何十投稿もする廃……アクティブな人達がたくさんいたので、いつ見てもフィードが流れていた。思えば、あれは異……特殊な場所ではないか。
現状のThreadsは、毎日欠かさず投稿してくれるインフルエンサーがいなければ成り立たない。フォローのみフィードを最初に開発しなかったのは、意図的なものだろう。インフルエンサー以外の投稿が盛り上がれば、フォローのみにしてもフィードが成り立つ。しかし、その時はいつ来るのだろうか?
他方、ときどき400文字くらいの長文が流れてきて、ギョッとすることもある。Twitterの文字数制限は会話のすれ違いを生み出すだけだと思っていたが、400文字が突然流れてきても読む気になれない。まだ美男美女の写真のほうが良いと思ってしまう。
けっきょく、今日のソーシャルメディアとは業として投稿するインフルエンサーを見るためのサービスなのかもしれない。誰だったか忘れたが、有名なブロガーがブログブームからしばらく経ったあと、「芸能人でもないのになんでブログとか書いているんですか?」と問われたという話を思い出す。
つまりInstagramはオンのインフルエンサーを見るアプリ、Threadsはオフのインフルエンサーを見るアプリというわけである。そうするとThreadsの目指す「公共の広場」(public square)とはなんなのだ? ということになるのだが。
ニュースでは全然ない
Threadsの話でいちばんびっくりしたのは、Instagram責任者とテックブログThe Vergeの記者による、このやりとりである。
(記者:ニュース業界がどうThreadsを活用するか、しないか、興味深いところだ。Metaはこの数年、ニュースから距離を置き、FacebookやInstagramでは文字通りニュースの表示を減らしてきたし、ニュースタブも廃止した。今はメディアにリンク税を支払う規制が進む国で、ニュースをすべて引き上げると脅している。だが、もしThreadsがTwitterの本当の競合になるなら、ニュース業界に活用してもらう必要がある。Metaはその準備が出来ているのか?)
目標はTwitterの代替になることじゃない。目標は、Twitterを活用してこなかったInstagramのコミュニティや、Twitter(とか他のプラットフォーム)上にいるけれど怒りっぽくない会話を求めているコミュニティの、公共の広場となることで、Twitterのすべてになるわけではない。
政治や難しいニュースがフィードに現れるのは避けられない。そういったコンテンツはInstagram上にもある程度は存在するし。でも我々はその分野を盛り上げていくつもりはない。
(記者:それは、そうした業界が他と比較して価値がないと思うからか? それともMetaにとってこれまでニュースがお荷物だったからか? その両方か?)
政治や難しいニュースは重要だし、そうじゃないとは受け取って欲しくない。ただ私の意見では、プラットフォームの視点で考えれば、それらによって得られるエンゲージメントや収益の増分は、それに伴う監視体制、否定的な感情(ぶっちゃけて言うとね)、健全性のリスクにまったく見合ってない。
政治や難しいニュースに入りこまなくても、世の中にはプラットフォームを活気づける素晴らしいコミュニティがある。スポーツ、音楽、ファッション、美容、エンタメなど。
要するに政治とかニュースとかやってもカネにならんし、みんな喧嘩するだけだし、手間もかかるし、もっとカネになる明るいコミュニティに注力したいよ、とニュース業界の人間に言ってるのである。ぶっちゃけすぎである。
10年以上前、アラブの春という政治運動が起きて、FacebookもTwitterもソーシャルメディアが社会を動かすのだとアピールしたものである。ところが、そのあとトランプ現象というのが起きると、ソーシャルメディアは政治への影響を語らなくなった。そして各国でリンク税やなにやらとソーシャルメディア規制が活発になると、ニュースなんていらないという態度を隠さなくなった。Threadsもその延長線にあるのだろう。
Twitterには、社会の分断を煽っているという批判があって、私もそう思っていた。しかし、社会の明るいところに目を向けて、分断など起こさないようにします! というサービスが出てくるのは、ちょっと想定外だった。喜ぶべきなのだろうか?
Instagramには以前から、キラキラ系だとか、批判というかやっかみがあったけれど、それは使い方次第なんだから自分の好きなように使えばいいじゃんと私は思っていた。でもThreadsはもっと意図的に明るいコミュニティになっていくのかもしれない。
ともあれ、使えば使うほど、あんまり自分に居場所はないなと思うのであった。