"Shadow Gambit"と完成されたゲームの先
Twitchというゲーム配信サービスにPrime Gaming(旧Twitch Prime)という有料会員制度があり、会員特典のひとつとして毎月何本かのゲームが無料で手に入る。Twitchは2014年に買収されて以降、Amazon傘下なので、Amazon Primeに入るとPrime Gamingもついてくる。要するに、Amazon Prime会員だと定期的に無料でゲームをもらえるのである。
とはいえ私を含め昨今のゲーマーは、有料で買ったゲームでさえ山のように積み上がっているもので、もとが有料だったとしても、無料で手に入れたゲームを遊ぶ時間はあまりない。
たとえばEpic Games Storeは毎週のように人気ゲームを無料配布しており、私はほぼ欠かさず入手していて、いま数えたら350本以上あったが、そのうち一本たりともお金を払っておらず、一方で実際に起動したことがあるのは数本程度という体たらくである。
ただ、Twitchで入手した無料ゲームのうち、めちゃくちゃハマったものが一本だけある。それが"Shadow Tactics: Blades of Shogun"である。そのあとSteamで(ちゃんとお金を払って)買い直すくらいにハマった。
"Shadow Tactics"はざっくり言えば戦争のゲームである。私は戦争のゲームが好きなのだが、ちょうど良い戦争ゲームというのはあまりない。世の中の戦争ゲームといえば、以下のようなものばかりである。
史実に基いた軍事オタク向けのゲーム。ドイツの戦車がどうとか、対戦車砲がこうとか。私は軍事オタクではないのでよく分からない。
グロいエイリアンと宇宙戦争するゲーム。武器はなぜかチェーンソー。グロい。
Civilizationをはじめとした、いわゆる4Xゲーム。戦争は外交の一種であり、並行して内政やら探検やらが求められる。何度も繰り返し遊ぶ想定のためストーリー性が薄く、時間がかかる。
戦争に没頭したいのに、合間合間で他のゲームをやらされるもの。XCOMの基地建設、Banner Sagaの兵站管理など。
リアルタイムで前線で戦争をしながら同時に街を作る、いわゆるRTS。面白いが猛烈にせわしない。ローチだとかハイドラリスクだとか、ユニットの種類が多すぎると覚えられない。
リアルタイムではないが、同様にユニットを作って前線に送り届ける系。ファミコンウォーズ、大戦略など。駒は使い捨てで、感情移入できない。
反対に、キャラ立ちしすぎていて、仲間同士の相性とか恋愛とか結婚とか子孫とかを考えたり、ペガサスナイトで軟派な敵を勧誘したりしなければいけないやつ。もしくはレベル上げのために仲間に石を投げ続けたりするやつ。
"Shadow Tactics"は戦国時代を舞台に、数人の侍やら忍者やらで大群が待つ敵の陣地に乗り込んでいく、ステージ制のゲームである。兵站の管理とか敵との外交とか、キャラクターの成長とか恋愛とか、面倒なことはなにもない。敵を倒していくだけのシンプルなゲームだ。
ただし、敵の数は圧倒的に多い。正面から戦っては絶対に勝てない。だから敵の視界を(文字通り)くぐりぬけながら、一人になったところを殺す。一人にならない敵は物音を立てて草陰に誘導して殺す。相互に監視しているグループは同時に殺す。そういうステルスゲームである。
そうやってチクチク敵を殺していくと、あれだけ大群のいた陣地が、いつのまにか空っぽになっている。このチマチマした感じがすごく良い。Steamレビューで「圧倒的好評」なのも納得である。
なんでも昔、コマンドスという似たようなゲームがあって、"Shadow Tactics"もコマンドス系と呼ばれているらしいが、私にとっては初めての体験であった。
開発したMimimi Gamesは、そのあとモチーフを西部劇に変えた”Desperados III”をリリースし、こちらも抜群に面白かった。評価も「圧倒的好評」。いきなり3なのは、かなり昔に1や2があったかららしい。
それから"Aiko’s Choice"という”Shadow Tactics”の前日譚もあった。特に進化と呼べるものではないし、本編を遊んでないと意味不明だろうが、本編をやり尽くした人には嬉しいボーナスである。
そして先日、新作の”Shadow Gambit: The Cursed Crew”が発売された。戦国時代、西部劇ときて、今度のモチーフは幽霊海賊だ(なぜ)。Mimimi Games自身が初めてパブリッシャーにもなった意欲作である。
ところが発売後まもなく、Mimimi Gamesはこれが最終作であると発表した。発表文では、今日のゲーム開発がいかに困難か淡々と書かれている。これだけ良いゲームを作ってきても、ゲーム開発を継続するのは難しいようだ。切ないが、それだけ今作でやりきって、他のゲームは作れないということでもあるのだろう。
私はちょうど”Shadow Gambit”の発売にあわせて(積んでいた)”Aiko’s Choice”を遊んでいたところだったので、あわててそちらをクリアして”Shadow Gambit”も買った。
ぶっちゃけ、今回もゲームの根本は今回も変わらない。隠れて敵をチクチク殺していくものである。でもその面白さは最初から完成されているし、それ以外の部分はどんどん洗練されていっている。キャラクターは増えたし、敵の種類も増え、操作はしやすくなった。やりこみ要素もたくさんある。今回も評価は現時点で「圧倒的好評」である。
そういうわけで、おすすめです。もちろん”Shadow Gambit”が一番完成度が高いのだが、セールで格安になった”Shadow Tactics”から入っても十分楽しいと思います。