これでお別れ:Last Call BBS
私は幼少のころからたくさんのゲームで遊んできたが、昔から分別のある人間だったので、「寝る時間を惜しんで遊んだゲーム」みたいなものはほとんどない。どれだけ熱中して遊んでいても、一つのことに長く集中できない。
もちろん、多少の例外はあって、遊びすぎて夢に出てうなされたようなゲームも僅かには存在する。たとえば、"SpaceChem"。元素記号みたいなものを化学式のベルトコンベアみたいなもので合成していくパズルゲームは「解けそうで解けない」を体現した作品で、悪夢のようにはまってしまった。
また"OpusMagnum"は錬金術を題材にしたパズルゲームで、こちらは脳味噌をふり絞って遊ぶ"SpaceChem"に比べるとだいぶリラックスして遊べるが、同じくらいはまったものである。
この二作をはじめ、多数のプログラミング風パズルゲームを世に送り出してきたのがZachtronicsである。そして、その最終作が"Last Call BBS"だ。ZachtronicsのZach Barthは本作でゲーム開発から引退し、教師になるらしい。
中身は、もちろんパズルゲーム。しかも詰め合わせである。
Zachtronics製の新作パズルゲームとしても十分魅力的なのだが、本作は古の日本産コンピュータ、SawayamaのZ5 Powerlance上を入手した主人公が、なぜか昔通りに立ち上がったBBSに接続し、(違法コピー版)レトロゲームをダウンロードして遊ぶという、ものすごく世代を絞りこんだキレのある設定になっている。
違法コピー(の設定)なので、ゲームのルールがよく分かなかったり、説明書は日本語で書いてあったりする。ゲーム画面は昔のモニター風に膨らんで表示されるし、ネットに接続する時はダイヤルアップの音がする。BBSってなに? という人はそもそも御門違いなのだ。
パズル自体は順番に解いているところなのだが、とりあえずピクロス風のDungeons & Diagramsはクリアした。ネタバレになるが、用意されたステージを順番にクリアして、そろそろ終わりかなというところでランダム生成ステージが出てくるので笑ってしまう。さらに物足りない人向けにはAdvanced Dungeons & Diagramsという名前の紙版も配布されていて、なんというか、こういうところが隅々まで完璧なのである。
また、20th Century Food Courtは絶妙に機能の足りない機械を使って料理作りのベルトコンベアを作り上げていくパズルで、”SpaceChem”や”OpusMagnum”と似た雰囲気である。どれだけ頑張ってもスパゲッティコードになっていくのが最悪だ。
こうしたゲームをクリアしていくと、それぞれのゲーム開発の裏話(という設定)が聞けて、どれも実際に長くインディーゲームを開発してきたZachtronicsの歴史とも符合しており、面白く、ちょっと泣ける。
最近ちょっと睡眠時間が多すぎるなという方は、遊ぶと間違いなく後悔する素晴らしいパズルばかりなので、ぜひ買ってみてください。