沈黙の練習
いまの世の中、コミュ力を鍛える方法みたいな本やらトレーニングやらが沢山あって、そういう話ばかり真に受けていると、いかに自分が論理的で物知りかを絶え間なくアピールすることが、まるで最善策かのように錯覚してしまう。
でも実際は、ソーシャルメディアで毎日起きる炎上を見ても分かるとおり、だいたいのトラブルは話すべきでないことを話した結果起きる。特に自分が詳しくない分野で知ったようなことを言うと、すぐに炎上してしまう。沈黙は金という有名な諺があるのに、なぜ人は黙れないのか。
それはたぶん、ソーシャルメディアのアルゴリズムや、ネットメディアのニュースは、なんとか私達をお喋りにしようとしているからだろう。どちらも、みんな黙ってしまったら成り立たない。だから「はい、今日はこの件について言いたいことを言いましょうね」と、お手頃な話題を毎日提供してくれる。私達はまんまとひっかかって、特に詳しくもないことについて、知ったような意見を言う。炎上しても、責任はとってくれない。
自分の意見を持ちましょう、会議では発言しましょう、誰の意見でも尊重しましょう、そんなことばかり言われてきた。でも知識もなにもない分野で素人が意見を言っても、大抵の場合はなんの価値も生み出さない。それどころか、知識のない人に限って、陰謀論みたいな、まったく間違った答えに辿りついてしまったりする。
そろそろ黙るためのトレーニングが必要かもしれない。みんなが飛びつきそうな話題、自分ならちょっと面白い切り口を提供できそうな話題、みんなが感心してくれそうな自分の話に繋げられそうな話題、そういう話題が次々に振られたとき、いかに我慢できるか。そういう修行ができる場があったら受けそうじゃないですか。第一回はガンダムです。これから講師がガンダムについて正誤入り交じった色々な話をしますので、みなさんは一時間ツッコミを入れずに黙って聞いてください。