メルカリ・ベイビーズ
メルカリって不用品を売れるサービスだと思っていたのだが、実際は不用品かもしれないものをなんでも試して買えるサービスなんだな、ということに気づいた。
売りから入るか、買いから入るか、メルカリへの導入は二通りあると思うが、私は完全に売りからであった。部屋の片付けのため、遊んでいないボードゲーム、電子楽器、ガジェットなどを処分しようと決意したのである。
私は買ったものを溜め込んでほぼ売らない一方、中古品はほとんど買わない人間だったので、ヤフオクもブックオフもほとんど利用経験がなかった。だから部屋も片付かない。それでもメルカリはさすがによく出来ており、不用品がすぐ高く売れるので感心した。なんだこのスポンサードコンテンツ感。
ところがメルカリに慣れるに従い、物を買う時、あまり悩まずに決めてしまうようになった。「気に入らなかったらメルカリで売ればいいよな」というわけである。物を減らすためにメルカリを始めたのに、本末転倒だ。
1万円で買える商品があったとする。今までは買って気に入らなくても、売るのは色々と面倒であった。だから気に入らないまま使い続けたり、そもそも気になっても買わないことが多かった。今はすぐにメルカリで売れる。新品同様なら八掛けでもすぐに売れる。手数料と配送料を取られても七掛け。そうすると3000円で商品のお試しができるという計算になる。
そう考えると、メルカリというのはあのアプリ単体のことではなく、この世界の売買すべてのことなのだと再認識する。あらゆるものをお試し可能にして、気に入らなければ引き取ってくれるサービス、それがメルカリなのだ。
このように考えると、メルカリに対する批判でよくある、中古流通が増えて物が売れなくなったという声も、やや一面的な感じがする。あるべきものがあるべきところへ流れついていく、その世界観がメルカリであって、我々はみなメルカリの意思のままに物を手に入れては手放していくメルカリの子供たちなのだ。
真面目に考えると、メルカリで中古が流通されるリスクもあれば、「気に入らなかったらメルカリで売ればいいよな」という手軽さで客層を増やして、利便性や愛着を与えることで転売を防ぎ、売上を増やしてくというチャンスもあるわけだ。
転売買い占めは許せないが。
メルカリでなんでも売れるとはいえ、重いもの、かさ張るものが売りづらいというのは、物理の現実である。Amazonはなぜあれだけスカスカの段ボールで商品を届けてくるのに、私が宅配便を使うとあれだけ配送料を取られるのか。
この問題を解決するため、そのうちメルカリもUberEatsみたいに個人が配送してくれるようになるのではないかと妄想する。売る人、買う人、届ける人の3者間マッチングサービス。
いや、届ける人は一人とは限らない。A地点からB地点へ、B地点からC地点へ、中身がなにかも知らないまま、次にどこへ届けられるかもわからないまま、バケツリレーをAIがマッチングさせていくのである。一億総運び屋の時代。コインロッカーから予想外の荷物を受けとる。棒高跳びに熱中するメルと、人気YouTuberになったカリ。
そんなことを考えながら、今日も部屋の片付けをしています。