カスハラの向こう
最近カスハラという言葉をよく耳にするようになって、ちょっと嫌な感じである。カスタマー・ハラスメントを略すとカスハラで、それはそうなんだが、仮にもカスタマーをカスって。皮肉にも、カスタマーをカス呼ばわりする語感の悪さ(良さ?)が、カスハラ問題を盛り上げているように思う。
私はカスタマーサポートの仕事をしたことがないから、その現実は分からない。でも私のキャリアは大半がリサーチャーとかコンサルティングとか、仕事を請け負う側だったので、お客さんの無茶なリクエストに対応するという意味で、その苦労は理解しているつもりである。1割の面倒な客の対応に、9割のエネルギーがなくなってしまうあの感じ。
ただ、もうちょっとマクロで考えてみると、カスタマーサポートというのはだいたい企業と消費者の関係であって、原則として前者のほうがずっと強い(B2Bの話はおいておく)。それを弱いサポート現場と強いクレーマーという狭い枠で切り出して捉えるだけでいいのかしらと思う。
だいたい、最近のカスタマーサポートの多くが、そもそも繋がるのに一苦労である。電話番号が分からなかったり、たらいまわしにされたり、保留が続いたり。私のようにたいへん平和で温厚な人間でも、オペレーターに繋がった時点ですでに苛々してしまうことがある。それはカスタマーの責任なのか?
もちろん、だからといってオペレーターに暴言を吐いたりして良いわけではない。そういう問題は粛々と処理していかなければならない。でも、カスタマーサポートが本当にカスタマーをサポートする体制になってるのかとは思うのである。そもそも分かりにくいサービスや不完全な商品を売って、現場のサポートに皺寄せが行って、しかもサポート体制が不十分なせいで、カスタマーに皺寄せが行くような仕組みになってないだろうか、と。
私が持ち前の暗い予想をするなら、今後カスハラ問題が顕在化され、カスハラに断固とした措置をとるようになり、現場のカスタマーサポートの負荷が減ったら、経営者はサポート人員を縮小するだろう。ちょうど満員電車の問題がコロナ禍で軽減されたとき、多くの鉄道会社が減便をしたように。
だから、ハラスメントの問題には対処しつつ、それだけでは終わらせずに、カスタマーサポートという経営者的にはコストセンターでしかないところを、働く人とカスタマーの両方にとって良い環境にするための仕組みが必要だと思うのだが、具体的な施策をここに書くと私の根っこにある左翼的な感じが全開になってしまうので今日はここでやめておきます。