広告が無駄を感じさせるとき
久々に炎上広告批評でもしようかと思ったが、早々にアップルが謝罪して終わってしまった。炎上してもスルーが一番という人もいるけれど、それは両極に意見のある人たちがいる場合の話で、今回のようにふつうに評判が悪いだけの場合は、さっと謝罪するのが一番である。
楽器などが壊されて勿体ない、無駄だと批判されている。でも極論を言えば、広告とかマーケティングとかいうのはそもそもすべて無駄である。なにもしなくても売れるならそれが最高だ。ただアップルほどのブランドがあっても、そうはならない。だから広告やマーケティングなど「余計な手間」が必要になる。そして、なるべく無駄に見えないように、かっこいいイメージとか、洒落たメッセージとかで埋めつくす。
巨大なディスプレイにハンマーを投げつけて壊すのも無駄と言えば無駄であるが、誰もそうは言わない。それがフィクションの力である。
今回のCMは、やってることはもちろんフィクションなのに、現実を想起させたせいで、無駄だと思わせてしまった。だから失敗である。
それにしても、あれだけ高性能であれだけ高価なタブレットのCMなのに、これまであった色々な機器を集約させられます、というメッセージが精々なのが寂しい。でも実際そうなのだから仕方がない。私自身、iPadもiPhoneも持っているけれど、これだけ毎日使っていながら、これだけ不自由でこれだけワクワクしない物も他にない。
スマートフォンは結局、ネットの文章や画像や動画を見るだけのデバイスになってしまった。タブレットもそれほど変わりはない。もちろん、びっくりするくらい高性能なカメラでなにかを撮影したり、2万円するペンで絵を描いたり、4万円するキーボードで文章を書いたりもできるわけだが、クリエイティブってそういうことだったのかなとは思う。
iOSについては日本でもサードパーティストアの解禁が議論になっているけれど、Androidを見る限りどんなストアがあってもスマートフォンやタブレットが本当の意味でクリエイティブなデバイスになる感じはしない。今のVRに全然ワクワクしないのも同じで、お膳立てされたプラットフォームからは新しいものが生まれてこないという、当たり前の話なのかもしれない。繰り返すけれど、あれだけの高性能で、多少のゲームくらいしか使い道がないのも悲しい話である。7000円で買えるm5stackのほうがずっと自由だ。
ちなみに今回のCM炎上について、GMのこの広告を引き合いに出している人がRedditにいた。2007年のスーパーボウルで放送されながら炎上して、すぐ取り下げられたらしい。まあ炎上するわなと思うけど、正直に言うと私は悪趣味で好きです。