小さくて完璧なゲーム
ここしばらく、新しいゲームを買わないようにしている。なんといっても私のSteamライブラリーにはすでに1500を超えるゲームがあり、一生遊べるどころか、9回生まれ変わっても十分遊べるくらいである。
その中でこのところ時間を割いているのが、"Divinity: Original Sin 2"という、歴史上最高のRPGと呼び名も高いゲームである。
とにかく隅から隅まで恐ろしく作り込まれた作品で、なにをやるにも恐ろしく時間がかかる。私は10時間くらい遊んでは納得できずにやり直すというのを何回か繰り返し、ようやくコツが分かってきて改めてイチから40時間ほど遊んでいるが、まだたぶん中盤の頭くらいで、とにかくものすごいゲームだ。
ここまで完璧なゲームで遊んでいると、さすがに息抜きが必要になり、私の1500のライブラリにはそういう作品もあるのだろうが、それはそれとしてこのまえのセールで"ElecHead"という評判の良いゲームを買った。2日かけて、合計2時間ほどでクリアして、そのままもう少し遊んで、全部の実績を獲得してしまった。素晴らしい作品であった。
最近のゲームは、顧客のコスパ指向に合わせたのか、とにかく無限に遊べる作品が多い。無限に遊べるゲームは、コスパが無限大と言える。とはいえ、ゲーム開発者があらかじめ無限にコンテンツを作ることはできないので、無限に遊べるというのは、つまりプログラム的に無限の組み合わせが提供されて、その組み合わせを遊べるということである。
不思議のダンジョンというゲームのシリーズが「1000回遊べるRPG」というキャッチコピーをかつて謳っていたが、まさにああいう、死んでははじめからやり直す、いわゆるローグライト系ゲームなどがコスパ指向の良い例だろう。
問題は、私のような年齢になってくると、無限に遊べるゲームがあっても、無限に遊ぶ時間も気力もないということである。"Divinity: Original Sin 2"のような最高に組み上げられたゲームであれば何十時間と費やすこともやぶさかではないが(それでも休み休み、年単位で進めているのだが)、プログラム的に繰り返されるゲームを繰り返すのはもうしんどい年頃なのである。
"ElecHead"は単純なパズル・アクションゲームで、ギミックは驚くほど少ない。数少ないギミックを丁寧に組み合わせたパズルが一つづつ提供され、一つづつ解いていく。考えられる組み合わせが尽きたら、それでゲームはおしまいである。現代のゲーム基準で言えば、俳句並の短さしかない。でも、コスパとか言わなければ、それでいいのである。なんなら、短い時間でこれだけ満足できるのだから、パフォーマンスはむしろ良いくらいである。もっとギミックを増やしたり、同じようなパズルを繰り返したりして、もっと長いゲームにすることも出来ただろうが、これくらい必要最小限に削られたゲームのほうが、私にはありがたい。
余談だが、”ElecHead”のデザインには、明らかに過去の優れたパズル・アクションからそのまま持って来られたような要素があって、その素直さも良かった。たとえば”VVVVVV”のマップデザイン、”Celeste”のアイテム、それからみんな大好きな”Braid”の1面など。完璧なゲームは完璧なゲームを真似して作られるのだな、と思いました。