いわゆる「大人のヒップホップ」
ヒップホップのことを書いてもあまり反響がないのは分かっているので簡単に書くが、De La SoulがThe Tonight Showに出演した時のライブがすごく良かった。
De La Soulは30年以上前から活躍するラップ・グループだが、サンプリングを多用した初期の作品が著作権で揉めたり、所属していたレーベルとトラブルがあったりして、大半の作品がストリーミングでは配信されない状況が続いていた(かわりに自分たちで無料配布したりしていた)。
そんなトラブルもようやく解消され、年初から古いシングルが順に配信がはじまっていたところで、2月にメンバーのTrugoyが亡くなってしまった。ちなみにTrugoy(トゥルーゴイ)は、Yogrut(ヨーグルト)の逆読みで、ラッパーの名前としては最高級のものだと思う。
De La Soulはデビュー当初から(あるいは今でも)そんな感じの抜けたハッピーでヒッピーなヒップホップとして評価されてきたが、私はそのあとのもうちょっと真面目な(でも抜けてる感じもある)作品が好きである。
上のライブがまさにそういう曲で、アルバムでいうと4枚目(1996年)。デビューからプロデュースをしていたPrince Paulと別れて作られた最初の作品である。もう25年以上前なので、曲自体がすでに成人しているのだが、今でも懐メロ感はまったくなく、ちゃんとすごく格好良いのが素晴らしい。
1996年というのは、ヒップホップにおいてアメリカの東海岸と西海岸の対立が高まっていた頃で、このあと2Pac(西)とNotorious BIG(東)がそれぞれ殺されるわけである。歌詞の内容もそれを受けているのだが、今となってはヒップホップがこの曲で嘆かれている以上に商業化される一方で、対立はヒップホップの中に留まらないものになってしまった。だから今回のライブでもこの曲が選ばれたのだろう。
そういう意味では、優れたSFが時に未来予知になるのと、優れたヒップホップが時に未来予知になるのは似ている気がする。
ヒップホップというジャンルが成熟するに従って「大人のヒップホップ」というような表現も増えてきたけど、本当に20年後も聴いている(聴ける)内容の曲がどれだけあるかと思う。
プロデュースは故J Dilla。
3月になって予定通り、アルバムも含めた全作品の配信が始まった。歴史的名盤と言われるデビューアルバムの”3 Feet High and Rising”から改めて入る人が多そうで、それはもちろん間違いではないのだけど、中期~最近のアルバムも聴いて欲しいです。