年の瀬なので世のブロガーのように今年一番の買い物を選ぶなら、メレルのVapor Globe 6という靴を挙げます。世間で人気の厚底シューズを物色しているうち薄底シューズにはまった顛末は半年前に書いた。
あらためて書くと、Vapor Globe 6はベアフットシューズと呼ばれる種類の靴で、靴底が薄い。点字ブロックを踏むと痛いし、夏場にアスファルトを歩くと熱い。地面からの力をダイレクトに受けるので、慣れないうちは近場を歩いているだけで筋肉痛になる。
ぶっちゃけ、人を選ぶので闇雲なおすすめはしない。アッパーはメッシュなので冬になると寒い。でも私は気にせず履いている。なぜかめちゃくちゃ楽しいから。
例えば料理をしているとき、ふと玉葱が切れていたことに気付く。近くのスーパーまで買いに行かなければいけない。すぐそこなんだけど、面倒は面倒である。でもVapor Globeでぶらぶら散歩できるならいいかな、と思う。そういう楽しさがある。
私は本来ファッションにあんまり興味がない。靴なんて快適であればそれでいい。軽くて、丈夫で、歩きやすくて、疲れにくければ最高だ。でも何かの間違いで、歩くとすぐに疲れる靴にハマってしまった。手段であったはずの道具で楽しむことを覚えたのである。
すこし前にも、行く宛もなく自転車に乗るのが楽しいという、似たような話を書いた。今年は目的もなく街や山を歩いたり、走ったり、自転車に乗ったりした一年だった。個人的には、けっこう驚きである。いままでは外出するには目的が必要で、目的を済ませたらすぐに帰ってくる、ゲームのスピードランみたいな生活を何年も送ってきたのに。
でも、私も中年になって、自分や周囲の人達を見て、目的を果たしても何にもならないなと思うことが増えた。もちろん、何か目的を達成した人は素晴らしい。でも一方では、目的を済ませても、また次の目的が出てくる。欲しいものを買ったら次の欲しいものが出てくる。キャリアアップをしたと思ったら、また次のキャリアを目指すのが自然だと扱われる。仕事を片付けたら次の仕事がある。そうやって、目的がなくなるまで燃え尽きるか、あるいは目的を達する道半ばで死ぬわけである。
どうせそうなる運命なら、目的に至るまでの道を楽しまないといけない。そういう風に考えるようになった一年だったと思う。四十代も半ばでそんなことを言い始めて、遅い発見だったかもしれない。でもまあ、ようやく気付いたのだから仕方がない。
そういうわけで薄底の靴を履いたり、自転車に乗ったり、山道を歩いたりしている。皆さんも、何気ない日常を取り戻すために靴を選んでみてください。ではまた来年。