比較的たくさん本を読む方法
定職がなくなっても生活は大きく変わらなかったと先週書いたが、明らかに良い変化もあって、たとえば本を読む時間が増えた。
自由な時間が増えたのだから、趣味の読書に割ける時間が増えたのは自然かもしれない。だから「最近なぜ本をよく読めるようになったか」と問われたら、定職がなくなったから、が最初の答えだろう。前にも書いたが「なぜ働かなくなると本が読めるようになるのか」である。
しかし時間があったらやりたかったことが出来るかというと、皆さんもご存知の通り、そういうわけにもいかないというのが現代の難しいところだ。読書のかわりにネットをダラダラ見ている可能性もあったわけである。
いや、正直に言えば今もネットをかなりダラダラ見ている。だがもう30年くらいネットをダラダラ見てきたわけで、この機会にもっとダラダラ見るようになる可能性もあったわけだ。ところが、ネット漬けで生活してきた人間にとっては悲しい話だけど、ネットで新しく面白いコンテンツを見つけるのはすごく難しくなっている。だからこれまで以上にネットをダラダラ見なくて済んでいる。
だいたいネットといっても、実際に見ているのはReddit(おもしろい)、一部のYouTubeチャンネル(おもしろい)、ジャンプ+のようなネットマンガ(おもしろい)、それから大手メディアのニュース、多少のソーシャルメディアと、内輪のDiscordやらで、つまり大半はウェルメイドな、大手メディアによるコンテンツである。昔のような、誰が作ったのか分からない雑多なコンテンツをサーフィンすることはほとんどなくなってしまった。
分かりやすいのはXで、たとえば寝て起きてフィードを確認すると、まったく投稿が流れていなかったりする。私がリストのメンテナンスを怠っているのは確かだが、それにしても昔あれだけ投稿していた人達はどこへ行ったのか。
仲間はもう辞めたとか死んだとか塀のなか
もちろんアルゴリズム・フィードを見れば無数の刺激的なコンテンツが流れているし、Togetterだかposfieだかには毎日新しい揉めごとが届けられているわけだが、私も良い大人なので、わざわざ台風の日に水路を見に行くようなことはしないのである。
そういうわけで「最近なぜ本をよく読めるようになったか」 と問われたら、二番目の答えは、イーロン・マスクがTwitterを買収したからだろう。ありがたいね!
ところで、私はご存知の通りたいへん几帳面な正確なので、本は一度手にとったら最後まで読むようにしていたのだけど、最近になってようやく、つまらない本はきっぱり諦めるようになった。中年になって、人生も無限ではないと気付いたのである。おかげで、その分また新しい本を読めるようになった。これが第三の理由である。
名前は秘すが最近本当につまらない小説があったので、1/3くらい読んだところでGeminiに「これ本当にここから面白くなる?」と聞いたら「序盤は散漫ですが終盤にかけてまとまって面白くなります」と言うので、2/3くらいまで我慢を重ねて読んだが、全くつまらないままで、「もう読まないから最後まで教えて」と改めて聞いたところ、「前回の回答は一般的な小説の構成パターンで、その本の中身は知りません」と言われた。吉本新喜劇のようにずっこけそうになった。
幸い、世の中にはたくさん面白い本がある。もちろんつまらない本もたくさんあるので、これはもう話題の本の情報どんどん集めて、どんどん手に取って、当たりを引くことを願うしかない。
一方、本のライバルといえば現代ではやはりスマートフォンで、常に持ち運んでいるし、いつでも手が届くという優位性がある。最近の私は、これに対抗して、本をあちこちに置いている。鞄の中に一冊、机の上に一冊、リビングのソファに一冊、みたいな。すみません、本当は数冊づつあります。
逆にスマートフォンは原則として机に置くようにして、ちょっと時間があった時に自然とスマートフォンよりも本へ手が伸びるようにするわけである。こういうちょっとしたことが、わりと効果がある。人間って単純だ。
それでも本に手が伸びない時は、結局はそこにある本が面白くないということなので、これは入れ替えていかなければいけない。本の世界も弱肉強食である。とにかく面白い本をあちこち手の届くところに置く、これが本を読むようになった第四の理由である。
そう考えると、本当に難しいのは本をたくさん読むことではなく、読みたくなるような本を常に、たくさん手元に持っておくことかもしれない。
ところで、こういうことを書くと、たくさん本を買って積読をすれば良いという風に受け取る人がいるけれど、積読というのはいつか読むからこそ、いつか訪れる価値があるのである。当たり前だが、ただ置いているだけではお金と場所の無駄であるとは、この機会にはっきり言っておきたい。
別に個人がどれだけ積読をしようと、お金と場所を無駄にしようと、その人の自由なので私は何も言わないが、最近はなんか出版・書店業界が積読を美化・推奨するような風潮があって、なんだか非常に嫌なものだ。
さて、こうして読書家アピールをしておくと、自分に対しても本を読むというプレッシャーになる。ここまで書いて「最近どんな本を読んだ?」と聞かれて「いや~最近はあんまり……」と答えるわけにはいかない。というわけで、この文章自体が、私が本を比較的たくさん読むようになった第五の理由となるはずである。
ついでに最近読んだ本の中でおすすめをしておくと、作者が亡くなった時に話題になった「後宮小説」が文句なく面白かった。堂々と中国史で嘘をつく方法、みたいな。
「ばらまき 選挙と裏金」は政治腐敗の話なので、面白い~と言うわけではないが、今の政治を考える上で良かった。最近こういう実録腐敗ものにはまっており「対馬の海に沈む」(JAの腐敗)とか「追跡 公安捜査」(公安と検察の腐敗)とか、読むとどんどん暗い気持ちになる。
あと蟹ブックスに同人誌を納品したので、まだお会いしたことはないのだが、店主の「出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと」を読んだ。これは特に序盤たいへんなホラーだったが、面白かった。
そういうわけで、おすすめの本があったら読むので教えてくださいね。最後まで読むかは分からんけども!


