つかれる靴で笑いながら歩く
長く歩いてもつかれない靴が欲しいと妻が言うので、厚底クッションで有名なホカのボンダイ8という靴を買った。良い機会なので私も同じモデルを買い、夫婦で揃いにしてみた。夫婦揃いの靴など二十年前に提案されたらぞっとしたと思うが、人間は変わるものだし、私がいかに社会的な人間になったということである。
この色を買うと君もお揃いになれる
これまでランニング用にいろいろな厚底シューズを履いてきたが、ボンダイ8を履いてみると、確かにこれは輪をかけて厚底である。輪をかけてというのは文字通りの意味で、靴の接地面が一回り大きいため、足の置き方がものすごく安定する。滑ってこけようとしてもこけないというか。なかなか不思議な感触だ。
良いものを買ったなと思っていたのだが、そのあと例によって色々とネットで調べてみたら、世の中には逆にまったくクッションのない、ベアフットシューズというのがあると知った。裸足のような感覚で歩けるので、足本来の歩き方が身につき(?)、結果的に足が鍛えられる(?)という。
面白そうだなと思って、メレルのVapor Glove 6というベアフットシューズを買ってみた。
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みなさんも時間があれば、ぜひお店で試しに履いてみて欲しいが、本当に笑ってしまうくらいクッション性がない。横断歩道の黒いところと白いところの違いが感触ではっきり分かる。点字ブロックは足のマッサージになる。階段の角が痛い。オフィスのカーペットなど、柔らかい床に辿りつくと本当にほっとする。あまりに面白いので、笑いながら歩いている。猛者はこれでランニングをするらしいので、ちょっとだけ試してみたが、私には十年早いと思った。
そもそも多くのランニングシューズは、つま先部分が、かかと部分より地面に寄るようになっていて、大袈裟に言えば前向きにつんのめったデザインになっている。他方でつま先部分のクッションは上向きに浮かびあがっており、自然と前へ前へと進むように靴が促くのである。
ベアフットシューズは、少なくとも私が買ったものは、つま先とかかとの上下差(ドロップというらしい)がない。つま先の上がりかた(トゥスプリングというらしい)もだいぶ控え目というか、写真だと多少あるように見えるが、履いてみると実にぺったんこである。一歩一歩よいしょよいしょと頑張らないと前に進めない。
しばらく歩いてなにかに似ているなと思ったが、体育館シューズだ。ぺったんこで、クッションのない靴。人生の間には何回か、体育館シューズのまま校庭のまわりを歩く不都合な場面があったと思うが、その不都合を常に味わうのがベアフットシューズだと考えると、概ね間違いではない。
先日など調子に乗って一日中履いて歩き回っていたら、夜中にふくらはぎがつった。最高である。ふだんからランニングや登山をして、それなりに足を鍛えているはずなのに、靴を変えたらふつうに歩き回っただけで足がつる。いかに自分の足が靴に甘やかされてきたのかと思った。実際、今まで履いてきたランニングシューズに戻ったときの安心感といったらない。こんなに自分は守られていたのかと感動する。
そういうわけで足を甘やかしたくないかた、ふつうに歩いて人一倍つかれたい方、ぜひ買ってみてください。最近買ったものの中で一番のお気に入りです。街を笑いながら歩きましょう。