陰謀論ってどれのこと?
最近、他人の主義主張を陰謀論と斬り捨てる人が多いが、どうしたものだろうね。
まあそれが、ワクチンにはナノロボットが入っていて、火星人が我々をコントロールしようとしているのだ~みたいな話だったら、どこまでまじめに向き合うかは難しいが(だからこそアメリカの現状は深刻だが)、たとえば公益通報制度がどうとか、百条委員会がこうとか言われると、わりと普段からニュースを読んでるつもりの私でも、なにが正しいのかちゃんと調べないとよく分からない。
「陰謀論に騙された人達」を問題視するなら、なにがどう間違っているのか、もっと具体的な話をすべきだと思うが、現実にはみんな140文字程度しか離せないので、陰謀論のレッテルを貼るだけに終始してる。
おかしな陰謀論を率先して批判すべきはずのマスメディアは、選挙中になると一段と腰の引けた報道ばかりだし、そもそも普段から毎日新しいニュースを報道するのが精一杯で、物事をまとめてわかりやすく解説してくれることは少ない。
だいたいネットのまともな新聞記事は有料のものが大半になってしまったし、ソーシャルメディアのアルゴリズムはウェブメディアへのリンクを冷遇してネットの回遊を抑えているので(これも陰謀論だったりして)、情報洪水の中でどんどん埋もれてしまっている。
だから、YouTubeやらXやらTikTokやらが難しい政治的状況を分かりやすく説明してくれるなら、それがどれだけ間違っていても、信じる人達がいるだろう。他に誰もそうしてくれないのだから。
ぶっちゃけ、古くは郵政民営化とか、大阪都構想とかも、私に言わせれば陰謀論みたいなものだったと思う。ただ、世の中を動かすそうした陰謀論=ナラティブを作る役割が、この二十年のあいだにマスメディアからYouTubeやらXやらTikTokやらの個人メディアへ徐々に移っていって、ようやく大規模な政治に影響を及ぼすところまで来た。Web 2.0だね。
そう考えると、例によって気に食わないことがあるとマスメディアを批判する人達が後を絶たないわけだが、弱体化する一方のマスメディアに解決策を求めても仕方がない。まあ、ネット民はみんな批判的マスメディア論が大好きだから、なにがあっても新聞やテレビのせいという感じになってしまうのだが、もしYouTubeやらXやらTikTokの陰謀が問題なら、まず批判すべきはYouTubeやらXやらTikTokではないか。
一方で、古い政治家がマスメディアを適宜コントロールしてきたように、新しい政治家はネットの、著しく分断化された環境でうまくナラティブを作っていくことが求められるのでしょう。新聞社一族の政治家がいるように、ソーシャルメディア一族の政治家が生まれるのでしょうね、ってそれがイーロン・マスクか。
オチはついちゃったけど、その上で陰謀論がはびこるようになった下地には、警察・検察・司法のおかしさもあると思っており、あれって犯罪じゃないのかよという事件が無罪になったりすると、それを批判するほうも擁護するほうも陰謀論を語り出す余地が生まれてくる。犯罪は犯罪としてちゃんと扱われる世の中であって欲しいですね。