ファスナー、上から開けるか? 下から開けるか?
夏は薄手を着るしかないし、冬はなんでも着込めばいいが、春と秋には着る服がない。
いや、春や秋が本当にやってくるなら、私だって相応の準備をすることもやぶさかではない。しかし昨今の春と秋といえば、夏と冬の合間に起きる束の間の現象のようなもので、真剣に向き合うに値しない。気付けば一年のほとんどが、夏か、冬か、夏になりきれなかった冬か、冬になりきれなかった夏になってしまった。日本は四季があってすごいみたいなことを言う人には責任をとって快適な春と秋を取り戻して欲しいものである。
春になるたび、去年の今頃はどんな服を着ていたのだっけなと思うが、今年はいつも以上に深刻である。というのは、この数年の春はまともに出社していなかったから、まともに服装を気にする機会がなかったのだ。気付けばクローゼットの大半が登山用の服ばかりである。
そういうわけで高尾山でも六本木でも使えそうなズボンを物色した結果、定番のノースフェイス、アルパインライトパンツに辿りついた。それにしてもノースフェイスっていつのまにこんなに人気になったのでしょう。このまえなど全身ノースフェイスの赤ちゃんを見かけて、どこで売ってるのだろうと考えてしまった。
さっそく重用しているのだが、二週間くらい繰り返し着たところで、オフィスのトイレに行ったら、股のファスナーが上下に二つあることに気付いた。伝わりますかね。私の説明力が問われるところだが、要するにファスナーを普通に上から下に開けることもできるし、下から上に開けることもできるので、用をするのにわざわざベルトを緩める必要がないのである。いま商品ページを見たらちゃんとダブルスライダー仕様だと説明が書いてあったのだけど、私は試着から実用までしばらくまったく気付かなかった。
この機能を使いはじめて面白かったのは、ファスナーを下から上に開けるということには割合すぐ慣れた反面、そのあとファスナーを上から下に閉めるのがどうにも違和感があるということである。みなさんもぜひ試してみてください。
そんな発見もありつつ服としては気に入っているのだが、どうにもブランドロゴが前面にどんとある服を着るのはなんだか苦手である。スマートフォン時代の今日、小さい画面でブランドが存在感をアピールするため、ロゴはどんどん大きくなっていると聞く。私が死ぬ前には極小ブランドロゴのブームが来て欲しいが、そのためには小脇に抱えて持ち運ぶ超巨大スマホの時代が到来しないといけないのだろう。
そういえば先日、後楽園のあたりを歩いていたら、老夫婦が有名ブランドのロゴを塗り潰したスニーカーを履いていて、これはなかなか洒落ていると思った。ブランド品を送ったら、ロゴを潰してくれるサービス(アート?)があった気がするが、ロゴなしの商品を高く売るブランドがあったら、意外と売れるかもしれない。